NEWS&TOPICS

2018/11/09 研究成果
パーキンソン病において神経病原性蛋白質を不活化する蛋白質を同定

新潟大学大学院医歯学総合研究科ウイルス学分野の盒恐輊Ы擽擬、藤井雅寛教授らの研究グループは、USP10蛋白質(注1)がユビキチン化蛋白質(注2)を凝集させ、その細胞毒性を不活化し、細胞死を抑制することを発見しました。この作用により、USP10がパーキンソン病の原因蛋白質(α-シヌクレイン)を不活化することが示されました。本研究は、ユビキチン化蛋白質の凝集体形成を特徴とする神経変性疾患の発症機構の解明に繋がることが期待されます。
 
【本研究成果のポイント】
・USP10蛋白質がユビキチン化蛋白質を凝集させ、その細胞毒性を不活化することを発見しました。
・パーキンソン病の原因蛋白質であるα-シヌクレインは、脳病変にレビー小体という凝集体を形成します。USP10がレビー小体の形成に関与することが示唆されました。
 
Ⅰ.研究の背景
加齢、酸化ストレスなどにより蛋白質の分解活性が低下すると、ユビキチン化蛋白質同士の多量体(オリゴマー)が細胞の中に蓄積し、細胞死が誘導されます。これに対して細胞はユビキチン化蛋白質を凝集させ、それらを1つに集めることによって大きな凝集体(アグリソーム(注3))を形成し、細胞死を抑制します。ユビキチン化した蛋白質の異常な蓄積は様々な神経変性疾患の発症に関与します。例えば、パーキンソン病です。パーキンソン病では、その病原因子であるα-シヌクレインが脳病変に蓄積し、レビー小体という凝集体を形成します。このレビー小体もアグリソームを介して形成されると考えられています。しかしながら、ユビキチン化蛋白質の細胞毒性の制御機構およびアグリソームの形成機構については多くのことが不明のままでした。
 
Ⅱ.研究の概要
本研究グループは、USP10蛋白質がアグリソームの形成を誘導し、ユビキチン化蛋白質の細胞毒性を不活化することを発見しました。α-シヌクレインはパ−キンソン病患者の脳病変にレビー小体という凝集体を形成します。培養細胞において、USP10はアグリソームの形成を誘導し、細胞死を抑制しました。このアグリソームにα-シヌクレインも局在しました。パーキンソン病患者の脳病変において、USP10はレビー小体に局在しました。これらの結果は、USP10がレビー小体の形成を誘導し、α-シヌクレインの細胞毒性を不活化することを示しています。
 
Ⅲ.研究の成果
ユビキチン化蛋白質のオリゴマーは細胞毒性を持ち、多くの神経変性疾患の発症に関与します。それを防ぐために、細胞は、これらのオリゴマーを大きな凝集体(アグリソーム)に集積させ、その細胞毒性を不活化します。アグリソームはユビキチン陽性の蛋白質凝集体です。α-シヌクレインはパーキンソン病の原因蛋白質です。パーキンソン病患者の脳病変において、α-シヌクレインは黒質や線条体などの神経細胞にレビー小体と呼ばれる、ユビキチン陽性の凝集体を形成します。レビー小体もアグリソームと同じメカニズムにより形成されると考えられています。しかしながら、ユビキチン化蛋白質の細胞毒性およびアグリソームの形成機構については多くのことが不明でした。本研究グループは、ユビキチン化蛋白質の分解を抑制することによって誘導されるアグリソームの形成にUSP10蛋白質が必須の役割を果たすことを発見しました。USP10の発現を低下させるとアグリソームの形成が低下しました。それに伴って細胞死が昂進しました。培養細胞において、USP10はα-シヌクレインを含むアグリソームの形成を誘導しました。パーキンソン病患者の脳病変において、USP10はレビー小体に局在しました。これらの結果は、USP10がα-シヌクレインの細胞毒性を不活化し、レビー小体の形成を誘導することを示唆しています(下記のモデル図)。

Ⅳ.今後の展開
ユビキチン化蛋白質の蓄積はパーキンソン病やアルツハイマー病を含む様々な神経変性疾患の発症に関与しています。今後、これらの疾患に、USP10がどのように関与するのかを解析する予定です。また、USP10を標的とした治療薬についても研究を進めていく予定です。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、平成30年11月4日のiScience誌(Cell Pressから本年3月に創刊された学際的なオープンアクセスジャーナル)のオンライン速報版に掲載されました。
論文タイトル:USP10 is a driver of ubiquitinated protein aggregation and aggresome formation to inhibit apoptosis
著者:Masahiko Takahashi, Hiroki Kitaura, Akiyoshi Kakita, Taichi Kakihana, Yoshinori Katsuragi, Masaaki Nameta, Lu Zhang, Yuriko Iwakura, Hiroyuki Nawa, Masaya Higuchi, Masaaki Komatsu, Masahiro Fujii.
doi: https://doi.org/10.1016/j.isci.2018.11.006
 
 
用語説明
注1:USP10(Ubiquitin-specific protease 10)蛋白質
脱ユビキチン化酵素活性を持つ蛋白質の1つです。脱ユビキチン化酵素は蛋白質に付加されたユビキチンを除去(脱ユビキチン化)します。脱ユビキチン化酵素活性を持つ蛋白質はヒトにおいて100種類以上同定されています。
 
注2:ユビキチン化蛋白質
ユビキチンは76アミノ酸から成る蛋白質です。ユビキチンは酵素によって蛋白質に付加され、付加された蛋白質の分解や機能を調節します。
 
注3:アグリソーム
ユビキチン化蛋白質の大きな凝集体で、細胞質の中心体付近に形成されます。ユビキチン化蛋白質が細胞に蓄積すると形成されます。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科 ウイルス学分野
藤井雅寛 教授
Tel:025-227-2118/Fax:025-227-0763
E-mail:fujiimas@med.niigata-u.ac.jp

最新の記事 ←新記事 一覧へ戻る 前記事→ 最初の記事