教授挨拶
新潟大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科学分野は、明治43(1910)年に設立された旧第一内科を母体とし、平成24(2012)年の内科再編により創設されました。初代の南野徹教授に次ぐ第2代教授として、令和3 (2021)年4月1日より私、猪又孝元が着任いたしました。重症心血管病の最後の砦として高度な専門医療を提供するとともに、予防意識の高い医療圏の形成を後押ししてまいります。そのなかで、新潟の地を愛し、世界に向け、ともに循環器疾患の診療や研究へ邁進する若者を一人でも多く輩出するのが当教室の使命です。
私は新潟大学を平成元年に卒業後、同第一内科に入局しました。心臓免疫に興味を持ち、平成4年からは長崎大学での国内留学の機会を得ました。その間、新潟県内の6医療施設で多くの臨床経験とよき先輩方に出会いました。その後の独・マックスプランク研究所への留学は、ノーベル受賞者に囲まれ、自分に夢を持つことを教えてくれました。平成10年からは首都圏へ越山し、北里大学にて心不全診療を中心に活躍の場をいただきました。新潟を離れたこの四半世紀においても、若いときに新潟の地で叩き込まれた基本は、常に医療者や研究者としての自分の根幹でした。方針に決断がつかぬとき、「諸先輩方ならどう考え、ご助言下さっていたか?」と考えることも少なくありませんでした。これこそ、後輩たちに引き継ぐべき教室の歴史だと思っています。
実践と発展
当科は、新潟大学医歯学総合病院の屋台骨として、虚血性心疾患、不整脈、心不全など重症患者さんを含むすべての循環器疾患に対し、心臓血管外科や救急科をはじめ多部署、多職種と連携を組んで24時間体制での高度診療を行っています。また、新潟県の循環器病医療圏を整備する主軸でもあり、循環器救急に加え、新たな視点として心リハを軸に「支える医療」を展開し、最終的には先制医療の発信基地を目指しています。
臨床での問題を解決に導くには、研究活動が欠かせません。「研究のための研究」ではなく、研究のうえで「夢を持つこと」と「目の前の問題解決」を共存させるテーマを推し進めています。すべての心血管病の最終病像である心不全をはじめ、教室が培ってきた不整脈や加齢疾患の精神を継承し、社会学的要求にも応える研究へ例外なく教室員の全員が参画します。
そして、これらの達成に必要なのは、人材です。自由に意見を述べ合える、元気で明るい活動の場を提供するなかで、自由闊達なチームを作り、魅力ある人材を育成します。現場主義を基本に、卒前も含めたシームレスな教育体制を進めていきます。
私は、育てていただいたこの新潟の教室を誇りに思っています。22年ぶりの里帰りですが、思い描くのは臨床・研究・教育の三本柱を王道的に進む教室であり、育てていただいた風土です。ぜひ教室員にも、この経験を共有させてあげたい。礎を固め、各人の才能を伸ばし羽ばたかせてあげたい。その結果として、本当の意味で社会への貢献と恩返しが達成できる、これが目指す教室運営です。
今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。