新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科

先輩医師の声

先輩医師の声

第一線で活躍する若手医師の声を紹介します。屋根瓦式の教育体制のもと「教え、教えられ、ともに育つ」をかけ声にして、積極的な臨床・研究の機会が得られます。

先輩医師の声 米山 晋太郎

医員 米山 晋太郎
新潟大学医歯学総合病院循環器内科 医員
米山 晋太郎(山形大学2014年卒)

守備範囲を広く、患者と日々向き合えるように

循環器内科は心不全、不整脈、虚血性心疾患を代表とする心血管領域の疾患を診断、治療する診療科です。日常の診療チーム体制もすべての分野をあえて混在させ、偏りなく患者を診療できる体制になりました。初めから診断名がわかり、ある分野だけの介入のみで解決できる患者はいないと考えます。また、対象が人間ですので①初めは心筋梗塞で目の前に現れたけど、年齢を重ねることで不整脈や心不全が問題になる②先天性心疾患や心筋症で若年時より診られていた方が、年齢を重ねて虚血性心疾患を併発し心機能がさらに低下することもあります。
私は冠動脈や下肢動脈などの動脈硬化について勉強したいと考え虚血疾患を主に専攻していますが、その分野以外の知識や経験も日々指導頂ける環境がここの循環器内科にはあります。その結果、ある一時点での介入だけでなく、その患者の人生における様々な移り変わりに向きあい寄り添えることができるようになると考えます。

時間との戦いがあるからこそ味わえるやりがい

時間に猶予があればじっくり考え、指導医との意見交換も繰り返し行い安全で最良な治療を熟考できます。しかし時に循環器疾患は緊急で判断しないと救えない命や機能障害が残ることがあります。
私が4年目の頃、県内の病院に研修に行っている際のことです。夜間帯に若年の方が心肺停止となり心室細動を繰り返している状況でした。なんとか蘇生できましたが意識障害がありましたので機能障害が残る可能性が示唆されました。即座に低体温療法を行い数日間意識がない状態でしたが連日話しかけ続けました。現在その方は社会復帰し家族と一緒に今まで通り暮らしております。
時間との戦いがあって、大変な局面もありますがこのような結果になった際は今まで味わったことのないやりがいを感じることができます。

一緒に高みを目指す仲間

同期が多い、近くの年代が多いことは幸せなことだと感じております。私は楽天的な性格ですがそれでも人間ですので悩んだりする局面もあります。日々の診療、全国や世界に向けての発表、論文作成など指導医の存在は常に大事ですが、それと併せパワーを与えてくれる存在が同期や近くの年代の仲間です。塊となって新潟の循環器診療を全国や世界に発信していく、そんな流れを感じます。

先輩医師の声 鷲山 雄三

新潟大学医歯学総合病院循環器内科 医員
鷲山 雄三(獨協医科大学2015年卒)

自己紹介

他県の医学部を卒業して2015年度、地元新潟で大学病院に研修医として入職しました。大学病院1年、協力型病院1年と研修しその後、循環器内科に入局して新潟県内各地の基幹病院で働き、2021年度に大学病院へもどってきました。医者としては7年目になります。専攻領域を決めてからの4年間は大変充実しており振り返ればあっという間に過ぎてしまった印象です。

循環器内科としての魅力について

心臓を中心に血管を通じて全身すべての臓器に関与していることもあり、とても幅広い領域であることが大きな魅力と思います。そして疾患の時間軸も広く、急性冠症候群等の超急性期から、慢性心不全の在宅調整などの慢性期治療まで対応が求められます。自分自身は過去に、「循環器といえば急性期疾患、急性期治療が主」という安直なイメージを持っていて、心筋梗塞や虚血性心疾患に対して緊急カテーテル治療を行い、それにより回復し笑顔になる患者を見ることで多くの達成感を感じていました。しかし、近年は心不全パンデミックもあり、慢性期疾患としての治療や予防介入の重要性が増しているような印象を受けます。治療介入についても循環器分野においては手術手技による介入(カテーテル治療、デバイス治療など)と内科的介入(薬剤調整など)のどちらもバランスよく行える印象があります。分野としても、治療の時間軸としても、治療方法についても、全て幅広くあるので勉強しなければならないことは多いですが、それも含めてやりがいと感じられると思います。

研修医へむけて

循環器内科として働く以上、患者の生死に直結するような困難な状況に直面することもあると思います。自分は、先輩医師や他職種スタッフからの協力もあり、何とかそれら困難を乗り越えることができました。皆で協力して困難を乗り越えること、そしてその経験を次に活かすこと。それが医療に関わる姿勢として何より大事だと思います。仕事は仕事と割り切って考えるのも良いと思いますが、困難を乗り越えたその経験は、その人の人生にも大きな影響を与えてくれると思います。post traumatic growth(心的外傷後成長)といえば言い過ぎかもしれませんが、循環器内科として仕事をしていると、そのように実感することも多くあります。日本人の死因第2位は心疾患であり、年々循環器疾患で困っている患者が増えてきている状況です。心不全、循環器疾患に対して、一人一人で立ち向かうのは難しくなってきたかもしれません。循環器分野に興味ある人は是非一緒にこの困難に立ち向かい、一緒に乗り越えていきましょう。

先輩医師の声 松尾 聖

新潟大学医歯学総合病院循環器内科 医員
松尾 聖(山形大学2012年卒)

入局の経緯と現在の仕事

私は他県出身で、地元の大学を卒業し、地元の病院で初期研修を行いました。研修医のときにご指導いただいた先生の縁もあり、新潟大学循環器内科に入局しました。以後、県内の関連病院や大学で勤務し、忙しいながらも充実した時間を過ごしました。医師5年目で結婚し、7年目よりA病院に勤務しています(2021年現在)。A市より約50km離れたB市に住んでいること、小さい子どもがいることもあり、短時間勤務で働いています。子どもが熱を出したりしてイレギュラーに休むこともありますが、職場での理解もあり働きやすい環境です。勤務内容としては主に平日日中の救急外来と循環器外来を担当しています。循環器疾患の入院患者さんは他の科を専門とする先生方が主治医となっていて、私自身は、入院主治医はしていませんが、循環器疾患で入院している患者さんの治療に対するコンサルテーションという形で携わっています。カテができる病院ではないこと、できる検査が限られていること、私自身が平日日中しかいないことから、A病院に入院する循環器疾患の患者さんは心不全の方が中心です。重症の患者さん、急性冠症候群や完全房室ブロックなどの緊急カテが必要な患者さんはB市の高次病院に緊急搬送しています。

地域医療を担う医師として働く

A病院はいわゆる地域医療を担う病院であり、私自身あまり循環器医としての需要がないのではないかと思っていましたが、全くそんなことはなく、高次病院での臨床経験を活かしつつ、最新の知識をアップグレードして臨床に携わる必要があるように思っています。関連病院や大学では常に上級医の先生や専門の先生がいて、困ったらいつでも相談できる環境でしたが、現在は基本的に自分ひとりで患者さんの治療方針を決定しなければならないので常に緊張感があります。医師が少ない地域では医師自身の力量がそのまま患者さんの治療に反映されやすいので、責任が重い一方、それがやりがいと感じています。循環器外来では慢性心不全、急性冠症候群治療後、ペースメーカなどデバイス植え込み後、弁膜症術後の患者さんなど幅広く診ており、また年間100人ほどの患者さんをB市などの高次病院に依頼しています。高次病院へ紹介する疾患としては心不全(基礎疾患の評価依頼・重症心不全の治療)、急性冠症候群、徐脈性不整脈、心房細動や発作性上室性頻拍(アブレーション治療依頼)などが中心ですが、他にも弁膜症・感染性心内膜炎・成人患者さんの先天性心疾患など幅広い疾患に渡っています。自分が治療しているわけではありませんが、高次病院での治療後に元気で帰ってくる姿を見るととても嬉しく、やりがいです。また新潟県は循環器内科医が少ないこともあり、カテに携わっていなくても引け目を感じる必要はあまりないように思っています。

結婚、出産、子育てを経験して

医師5年目が終わる頃に結婚しました。数年間ではありますが関連病院や大学でカテや臨床を経験していた後だったということもあり、結婚後の仕事と家庭の両立には少し余裕があったように思います。出産後は約8ヶ月の産後・育児休暇を経て復帰し、子どもは保育園に入園しました。もう少し休暇を取ることはできましたが、子どもがある程度大きくなったこと、4月入園の方が園の環境に慣れやすいと考えたこと、A病院での循環器診療需要があることなどから仕事に復帰しました。仕事と家庭の両立は大変なこともありますが、子育てについては職場の理解や家族の協力をもらいながら楽しくやっています。夫も循環器内科医で多忙なので、主に私が子育てや家事を担っています。仕事と家庭と「両立」というより「分担」に近いかもしれませんが、お互いできることとできないことがそれぞれ違うので、夫には仕事を中心に頑張ってもらえればと思っています。休日には家族との時間を作ってくれますし、私の仕事も派手ではないもののやりがいがあり家事や子育ても楽しいので、よいバランスのように思います。またWebでの講演会が多くなってきて、知識のアップデートがしやすい環境になっていることも女性にとって大きなプラスと思います。私自身、出産後に専門医の資格を取得したり、メール等で大学の先生に論文の指導をいただきアクセプトに至ることが出来ました。女性のライフイベントは予想しづらく、また自身や周囲への影響が大きいところがあると思います。私自身、行きあたりばったりで現在に至っていますが、ライフイベントがあるごとに医局や職場の先生方にご理解とご配慮を頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。循環器内科というとカテに関心や注目が集まりがちですが、実際はカテ以外の仕事も非常に多く重要なので、性別関係なく活躍できるフィールドのように思います。私の働き方や家庭事情はあくまで1つの例です。もちろんカテの分野でも活躍している女性の先生もたくさんいらっしゃいます。それぞれの先生に合わせた働き方をサポートしてくれますので、女性だからということで循環器内科に対して臆さなくて大丈夫です。純粋に循環器内科に興味があれば、一緒に働けたら嬉しく思います。

先輩医師の声 松尾 佑治

新潟大学医歯学総合病院循環器内科 医員
松尾 佑治(自治医科大学2011年卒)

これまでの経緯

私が結婚したのは医師6年目でした。自治医科大学卒業ということもあり、僻地勤務の義務年限があり、4-5年目と7-9年目(計5年間)は僻地にて一般内科として働いておりました。なので私自身循環器内科としての経験はまだ浅く日々勉強させていただいています。医師9年目、すなわち義務年限最後の年度に長女が誕生しました。当時は地域医療に従事していて、今ほど仕事量が多くなく、家庭の時間はうまくとれていたと思います。義務年限終了後は循環器内科に復帰したので、やはり忙しくなり家庭に使える時間はどうしても減ってしまったと思います。休日に当番でなければ子どもと出かけたりしますが、さすがに子育ての多くは妻に任せてしまっていて申し訳ない限りです。

男性医師として家庭や育児に関わるためには

仕事と子育てとの両立には、職場の理解や働き方が言うまでもなく重要と思います。私たちの場合、義務年限という縁で、二人でA病院に勤務しておりました(妻は自治医大ではないのですが、医局の御配慮で同じ職場に勤務させていただきました。ちなみにそんな配慮をしてくれる医局はあまりないですよ笑)。妻は入院を持たずに外来・救急に専念し当直も免除していただきましたので、産休/育休前後も仕事と両立できていたと思います。ただ、現在私自身が仕事と子育てを両立しているとは言いがたく、結局家族でどう分担・協力し合うかに尽きると思います。自分にできることは限られていますが、できるだけ早く帰宅して時間をとれるよう心がけています。もう少し育児に関わりたい思いも強いのですが、かといって自分が休むと他の先生方にしわ寄せがいってしまいますし、どこの病院も人的余裕があるわけではないので、難しいところです。

循環器内科医が活躍できる場所はたくさんある…そして求められている!

業務内容について個人的な意見ですが、循環器内科というとどうしても心カテをメインに考えがちです。総合病院ですと、確かに心カテが業務の多くを占めてしまうかもしれません。しかし、心カテ以外にも実際は画像・生理検査、リハビリ、外来業務など仕事内容は多岐にわたります。どれも欠かすことのできない内容です。もちろん、病院によってできる検査、できない検査がありますので、適切に紹介する判断も必要です。新潟県は人口あたりの医師数が全国最下位ですが、循環器内科医師数も最下位です。都市部と地方部ではどうしても医療アクセスに差が出ます。地域の患者様にも良質な医療を提供できるようにするのはとても重要です。心カテができない環境でもやるべきことはたくさんあります。循環器内科はどこでも需要の高い診療科です。皆さんとともに当県の医療をより良いものにしていければ幸いです。