抗がん剤副作用による腎障害を克服し抗腫瘍効果を高めることに成功 −メガリン拮抗薬の有用性−
新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野の有田将史(大学院生)、同研究科救急医学分野の青木信将助教、同大学医歯学総合病院呼吸器・感染症内科の渡部聡講師、同大学大学院医歯学総合研究科腎研究センターの斎藤亮彦教授らを中心とした研究グループは、抗がん剤の一つであるシスプラチンによる腎障害のメカニズムを明らかにするとともに、腎障害の予防によりシスプラチンの抗腫瘍効果を増強することに成功しました。本研究の成果により、シスプラチンを高用量で使用し治療効果を増強できる可能性や、腎機能が低下した方にもシスプラチンを安全に投与できる可能性があります。
【本研究成果のポイント】
・シスプラチンは様々な癌に有効だが、副作用で起こる腎障害により用量が制限される。
・腎障害の原因であるメガリンの働きを抑えて、腎障害を防ぐことに成功した。
・シスプラチンの腎障害を軽減し、抗腫瘍効果を増強することができた。
Ⅰ.研究の背景
シスプラチンは様々な癌種に広く効果を示す重要な抗がん剤です。しかしシスプラチンは腎臓への負担が大きく、腎障害のため用量が制限されています。そこで、シスプラチンによる腎障害のメカニズムの解明と予防が研究されてきました。本研究グループは過去の研究で、腎臓にあるメガリンというタンパク質がシスプラチン腎症の原因であること、メガリン拮抗薬であるシラスタチンがシスプラチンとメガリンの結合を阻害することを報告しました。
Ⅱ.研究の概要と成果
メガリンは腎臓の近位尿細管に発現しているタンパク質で、尿細管内に排出された物質の再吸収に関わっています。本研究グループは過去の研究で、シスプラチンがメガリンと結合し、尿細管上皮細胞内に再吸収されて腎障害を引き起こすことを明らかとしました (Horiら, J Am Soc Nephrol, 2017)。本研究では、シラスタチンがシスプラチンとメガリンの結合に拮抗し、シスプラチンによる腎障害を防ぐこと、シラスタチンを投与したマウスでは、シスプラチンの投与量を増やしても腎障害が起こらないこと、安全にシスプラチンの治療効果を高め得ることを示しました。
Ⅲ.今後の展開
本研究結果を含め、これまで得られた知見をもとに、シラスタチンを含む薬剤の臨床応用を進めています。新潟大学医歯学総合病院呼吸器・感染症内科で治療を受ける進行期非小細胞肺癌の患者さんを対象に、シラスタチンを含む薬剤(チエナム®)の第一相臨床試験(シスプラチンを含むがん化学療法における、シラスタチンの急性腎障害予防効果を検討するための予備的、非盲検薬物動態試験:UMIN000030363)を開始しました。現在は症例集積を終了し、解析を行っています。
Ⅳ.研究成果の公表
これらの研究成果は、2021年1月12日、Scientific Reports誌に掲載されました。
論文タイトル:Combination therapy of cisplatin with cilastatin enables an increased dose of cisplatin, enhancing its antitumor effect by suppression of nephrotoxicity
著者:有田将史、渡部聡、青木信将、桑原頌治、鈴木遼、後藤佐和子、安部悠子、�盒業�帆、佐藤美由紀、穂苅諭、大坪亜矢、庄子聡、野嵜幸一郎、市川紘将、近藤利恵、林正周、大嶋康義、蒲澤秀門、細島康宏、小屋俊之、斎藤亮彦、菊地利明
doi: 10.1038/s41598-020-80853-6
Ⅴ.謝辞
本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED:課題番号JP20ek0310014)の支援によって行われました。
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
呼吸器・感染症内科
講師 渡部 聡(わたなべ さとし)
E-mail:satoshi7@med.niigata-u.ac.jp








