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2024/04/05 研究成果
皮膚科におけるオンライン診療:皮膚科専門医は高い診断精度を発揮できる

新潟大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の藤本篤講師(研究当時)、阿部理一郎教授、同研究科地域医療確保・地域医療課題解決支援講座の井口清太郎特任教授らの研究グループは、ビデオ通話を利用した皮膚疾患のオンライン診療(注1)において、診断精度を医師の専門分野別に検証した研究成果を報告しました。
 
【本研究成果のポイント】
・皮膚科医が様々な皮膚の病気を診断する際には、視診による皮膚病変部の詳細な観察から得られる所見が重要な手がかりになります。
・近年一般的となりつつあるオンライン診療において、診察医が視診による情報で皮膚疾患を正しく評価できるかどうか、診断の精度を皮膚科専門医と他の分野を専門とする医師との間で比較した研究はこれまでありませんでした。
・今回、本研究グループはオンライン診療で使用されるビデオ通話を利用した皮膚疾患の遠隔診断において、他の分野を専門とする医師よりも、皮膚科専門医の方が高い診断精度を発揮することを示しました。
 
Ⅰ.研究の背景
多くの皮膚疾患では、皮膚に「皮疹」と呼ばれる見た目でわかる症状があらわれます。皮疹の性状(形や色など)や分布は皮膚疾患を診断する上で非常に重要な情報であり、医師は皮疹の視診を行って診断しますが、その他に触診などから得られる情報もあります。昨今、ビデオ通話を利用したオンライン診療が一般的になりつつありますが、オンライン診療において、つまり主に視診による情報だけで皮膚疾患を正しく評価できるかについては、医師の専門分野別に診断精度を検証した研究はありませんでした。
そこで本研究グループは、オンライン診察における皮膚疾患診断の性能を、皮膚科専門医、皮膚科専攻医(専門医未取得の皮膚科医)、非皮膚科専門医(内科専門医)の間で比較検証しました。
 
Ⅱ.研究の概要
本研究は、すでに診断の確定している18名の皮膚疾患患者さんの皮膚の状態を、別室に控えている合計18名の医師(皮膚科専門医6名、皮膚科専攻医6名、非皮膚科専門医6名)にビデオ通話システム「Zoom」(Zoom Video Communications, Inc.)を使用して中継しました。医師らは、中継画面を通じて患者さんの皮膚病変を観察し、患者さんの年齢・性別と簡単な病気の経過等の情報と合わせて診断を回答しました[図1]。

その結果をもとに医師らのオンライン診療における皮膚疾患の診断精度を算出し、それぞれの医師ごとや、皮膚疾患の種類などにより診断精度が変わるどうかを検証しました。
 
Ⅲ.研究の成果
オンライン診療における診断精度は、皮膚科専門医は83.3±3.5%(77.8-89.0%)、専攻医は53.7±20.7%(27.8-77.8%)、非皮膚科専門医は27.8±5.0%(22.2%-33.3%)でした。皮膚科専門医は、非皮膚科専門医(P <0.0001)に対してだけでなく、専攻医(P < 0.05)と比較しても、高い診断精度となる結果が示されました[図2]。

また、皮膚科専門医のみが80%以上の高い正診率を発揮した疾患カテゴリーとして、乾癬を含む炎症性角化症(皮膚科専門医87.5%、専攻医58.3%、内科専門医20.8%)や、多形滲出性紅斑を含む炎症性皮膚疾患(皮膚科専門医83.3%、専攻医33.3%、内科専門医8.3%)、遺伝性角化症(皮膚科専門医83.3%、専攻医33.3%、内科専門医0%)などが明らかとなりました。
 
Ⅳ.今後の展開
情報技術インフラの向上やスマートフォン等の普及によって、ビデオ通話を利用したオンライン診療が遠隔医療の主流になることが予想されます。 本研究では、遠隔皮膚科医療における皮膚科専門医の役割と、効果的かつ安全な遠隔皮膚科医療のために構築すべき制度に焦点を当てています。今後、より様々な皮膚疾患の診断精度を検証することで、遠隔皮膚科医療の適正な促進につなげていくことが望まれます。
 
Ⅴ.研究成果の公表
本研究成果は、2024年3月20日、日本皮膚科学会公式英文誌「Journal of Dermatology」に掲載されました。
論文タイトル:Can dermatologists reach their full potential in Teledermatology?: A validation study of diagnostic performance of skin diseases in Live Video Conferencing Teledermatology
著者:Atsushi Fujimoto, Ryota Hayashi, Seitaro Iguchi, Riichiro Abe
doi: 10.1111/1346-8138.17197
 
Ⅵ.謝辞
本研究は、AMED課題番号JP18lk1010029h0001「皮膚疾患画像ナショナルデータベースの拡充とAI活用診療支援システムの開発」の支援を受けて行われました。
 
 
【用語解説】
(注1)オンライン診療:ビデオ通話など情報通信機器を通して医師の診察を受ける方法。それに対して医療機関に足を運び診察を受ける通常の受診は対面診療と呼ばれる。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関すること】
新潟大学医歯学総合研究科 皮膚科学分野
教授 阿部 理一郎(あべ りいちろう)
E-mail:aberi@med.niigata-u.ac.jp
 
【広報担当】
新潟大学医歯学系総務課
E-mail:shomu@med.niigata-u.ac.jp

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