飲酒に関連する「超悪玉LDL」コレステロール高値を大規模健診データで確認 − 従来の脂質検査だけでは捉えきれない飲酒関連脂質リスクの可能性 −
【本研究成果のポイント】
・健康診断受診者55,745名を対象に、脂肪性肝疾患(従来の「脂肪肝」)の有無および飲酒量と、粒子が小さく動脈硬化を起こしやすい「超悪玉LDL」とも呼ばれるsmall dense LDL コレステロール(sdLDL-C)との関連を解析しました。
・脂肪性肝疾患の存在と飲酒量の増加が重なるほど、高sdLDL-C血症の頻度は高くなりました。さらに詳細に検討した結果、従来の脂質指標(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)を考慮すると、脂肪性肝疾患との関連は大きく弱まりましたが、飲酒量が多いほど高sdLDL-C血症の頻度が高くなる傾向は残りました。
・従来の脂質指標だけではとらえきれない飲酒関連脂質リスクの評価において、sdLDL-C測定が新たな補足的指標として有用である可能性が示唆されました。
新潟大学大学院医歯保健学研究科 血液・内分泌・代謝内科学分野の松林泰弘助教、曽根博仁教授らの研究グループは、新潟県労働衛生医学協会と共同で、健康診断受診者55,745名のデータを解析し、飲酒量および脂肪性肝疾患とsmall dense LDL cholesterol(sdLDL-C)との関連を検討しました。その結果、脂肪性肝疾患があり、飲酒量が多い群で高sdLDL-C血症の頻度が最も高いことが明らかになりました。また、通常の健診で測定される脂質指標には脂肪性肝疾患との関連はある程度反映される一方で、飲酒量との関連は十分には反映されにくい可能性が示されました。本研究成果は、脂肪性肝疾患と飲酒に関連する脂質リスクをより詳しく評価するうえで、sdLDL-Cが有用な補足的指標となる可能性を示すものです。
�機ジΦ罎稜愀�
脂質異常症は、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の重要な危険因子です。一般的な健康診断では、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪が測定されていますが、LDLコレステロールの値が同じであっても、LDL粒子の大きさや性質が同じとは限りません。sdLDL-Cは、粒子が小さく密度の高いLDLコレステロールであり、「超悪玉LDL」と呼ばれることもあります。近年、脂肪性肝疾患や飲酒習慣と心血管疾患リスクとの関連が注目されていますが、これらがsdLDL-Cとどのように関連するかは十分に明らかではありませんでした。
�供ジΦ罎粒詰�
本研究では、2024年に健康診断を受診した55,745名を対象としました。腹部超音波検査により脂肪性肝疾患の有無を判定し、飲酒量を低量、中等量、過量の3群に分類しました。さらに、脂肪性肝疾患の有無と飲酒量を組み合わせた6群で、直接測定したsdLDL-Cとの関連を解析しました。高sdLDL-C血症は、sdLDL-C 35 mg/dL以上と定義しました。この35 mg/dLという値は、過去の日本人集団を対象とした研究で、冠動脈疾患リスクの上昇と関連する目安として用いられてきた値を参考に設定しました。
�掘ジΦ罎寮�果
1. 脂肪性肝疾患の存在と飲酒量の増加が重なるほど、高sdLDL-C血症の頻度が高い
高sdLDL-C血症の頻度は、脂肪性肝疾患なし/低量飲酒群で23.3%でした。一方、脂肪性肝疾患あり/過量飲酒群では76.4%と最も高く、脂肪性肝疾患と飲酒量はいずれも高sdLDL-C血症と関連し、両者が重なる群で最も高い頻度を示しました。
2. 従来脂質を考慮すると脂肪性肝疾患との関連は弱まる一方、飲酒量との関連は残る
年齢、性別、BMI、喫煙、糖尿病、降圧薬・脂質低下薬の使用などを考慮した解析では、脂肪性肝疾患がある群で高sdLDL-C血症の頻度が高い結果でした。しかし、さらにLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪を考慮すると、脂肪性肝疾患の有無による差は大きく縮小しました。一方で、飲酒量が多いほど高sdLDL-C血症の頻度が高くなる傾向は、これらの脂質指標を考慮した後も残りました。
�検ズ8紊療験�
本研究はsdLDL-C測定によって心血管疾患を予防できるかどうかを直接検証した研究ではありません。今後は、飲酒習慣や脂肪性肝疾患を有する方において、sdLDL-Cが心血管疾患発症リスクの層別化に有用であるかを、前向き研究や臨床アウトカム研究で検証する必要があります。sdLDL-Cは通常の採血で測定可能な検査ですが、一般診療で広く行われている検査ではなく、主に健診・人間ドックなどでオプション検査として測定されています。本研究成果は、健診・人間ドックにおいて、従来脂質検査に加えてsdLDL-Cを測定する意義を検討するための基礎的知見となるものです。
�后ジΦ羸�果の公表
本研究成果は、2026年6月19日、国際学術誌「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に掲載されました。
【論文タイトル】Alcohol and Steatotic Liver Disease Exhibit Divergent Associations with High Plasma Small Dense LDL-C Concentration
【著者】Yasuhiro Matsubayashi, Kiminori Kato, Mao Watanabe, Yasuki Ito, Noriyuki Satoh, Takaaki Sato, Masaru Kitazawa, Takaho Yamada, Hirohito Sone
【doi】https://doi.org/10.1210/clinem/dgag234
�此ゼ媼�
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 科研費(JP23K16814)の支援を受けて行われました。また、デンカ株式会社よりsdLDL-C測定に関する技術的支援を受けました。同社は、研究デザイン、データ収集、統計解析、結果の解釈、論文作成には関与していません。
【用語解説】
(注1)small dense LDL cholesterol(sdLDL-C)
粒子が小さく密度の高いLDLコレステロールです。一般に「超悪玉LDL」と呼ばれることもあります。動脈硬化との関連が報告されており、従来のLDLコレステロール値だけでは分からない脂質リスクを反映する可能性があります。
(注2)脂肪性肝疾患(SLD)
steatotic liver diseaseの略です。従来「脂肪肝」と呼ばれてきた病態を含む疾患概念です。
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯保健学研究科 血液・内分泌・代謝内科学分野
教授 曽根 博仁(そね ひろひと)
E-mail:sone@med.niigata-u.ac.jp









