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2026/08/18 研究成果
AIを活用したPET/CT画像の解析で肺がん免疫療法の副作用と治療後の経過を予測 −患者一人一人に適した治療、経過観察の方法の発見に寄与−

【本研究成果のポイント】
・免疫療法開始前に撮影したPET/CT画像から、肺がんではない方の肺全体(非がん肺)の炎症の強さを、AI(人工知能)を活用して定量的に評価しました。
・本研究結果から、非がん肺の炎症の数値が高い患者は、免疫療法による様々な副作用が起こりやすい可能性が示唆されました。
・さらに、非がん肺の炎症の数値が高い患者では、がんの進行が早く、生存期間も短いことが示され、副作用と予後(治療後の経過)の予測に役立つ可能性があります。
 
研究の概要
新潟大学大学院医歯保健学研究科放射線医学分野の山崎元彦准教授、石川浩志教授、同呼吸器・感染症内科学分野の渡部聡准教授、菊地利明教授らの研究グループは、肺がん患者の治療前に撮影した18F-FDG-PET/CT検査(注1)の画像をAI(人工知能)で解析し、がんではない方の肺(非がん肺)における炎症の強さを定量的に評価しました。
その結果、非がん肺の炎症を示す数値が高い患者では、免疫チェックポイント阻害薬(注2)による様々な副作用、いわゆる免疫関連有害事象(注3)が起こりやすいだけでなく、がんが悪化せずに経過する期間および生存期間が短いことが分かりました。
本研究成果は、治療前に通常行われる18F-FDG-PET/CT検査を活用して、免疫療法による免疫関連有害事象のリスクと治療後の経過を同時に予測できる可能性を示すものです。
 
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免疫チェックポイント阻害薬を用いた免疫療法は、患者自身の免疫を活性化してがんを攻撃する治療法であり、進行期肺がんの治療成績を大きく改善しました。一方で、この薬剤で活性化した免疫が、がんだけでなく、正常な臓器も攻撃することで、免疫関連有害事象と呼ばれる副作用が起こることがあります。免疫関連有害事象は、肺、皮膚、甲状腺、消化管、肝臓など、様々な臓器に生じます。重症化すると薬剤の中断や入院治療が必要となるため、治療開始前にその発症リスクを予測する方法が求められています。
本研究グループはこれまでに、肺がん患者の治療前に撮影した18F-FDG-PET/CT画像をAIで解析し、非がん肺の炎症の数値が高い患者では、免疫関連有害事象の一つである間質性肺疾患(注4)が起こりやすいことを報告しました。
今回の研究では、同じ患者集団をさらに詳しく解析し、非がん肺の炎症の強さが、間質性肺疾患以外も含めた免疫関連有害事象全体や、免疫療法後のがんの進行、生存期間と関連するかを検討しました。
 
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本研究では、新潟大学医歯学総合病院で免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた肺がん患者165人を対象としました。治療前に撮影された18F-FDG-PET/CT画像から、AIを活用して非がん肺を自動で抽出しました(図1)。抽出後に、非がん肺に18F-FDGがどの程度集まっているかを測定することで、非がん肺の炎症の強さを数値化しました。
その結果、非がん肺の炎症の数値が高い患者では、低い患者と比べて、免疫療法による免疫関連有害事象が起こる可能性が約6.9倍高いことが分かりました(図2)。
さらに、非がん肺の炎症の数値と治療後の経過との関連を調べたところ、炎症の数値が高い患者さんでは、低い患者よりも、がんが悪化せずに経過する期間が短く、生存期間も短いことが分かりました(図3)。
これらの結果から、治療前の18F-FDG-PET/CT画像で評価した肺の炎症の強さが、免疫療法による免疫関連有害事象の起こりやすさと、その後の治療経過の両方を予測する手がかりになる可能性があります。

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今回の研究は、新潟大学医歯学総合病院で免疫療法を受けた患者のみを対象とした、単施設の研究です。今後は、複数の医療機関から患者のデータを収集し、同様の結果が得られるかを検証する必要があります。
また、18F-FDG-PET/CT画像の解析結果と、血液検査、患者の全身状態、がんの遺伝子情報などを組み合わせることで、副作用と治療効果をより正確に予測できる可能性があります。
将来的には、免疫関連有害事象が起こるリスクの高い患者を治療前に見つけ出し、患者一人一人に適した治療法や経過観察の方法を選ぶために役立てることを目指します。
 
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本研究成果は、2026年7月27日、科学誌「Academic Radiology」にオンライン掲載されました。
【論文タイトル】
High FDG Uptake in the Non-cancerous Lung Predicts Immune-Related Adverse Events and Poor Prognosis in Patients with Lung Cancer Treated with Immune Checkpoint Inhibitors
【著者】
Motohiko Yamazaki, Satoshi Watanabe, Masaki Tominaga, Takuya Yagi, Yukari Goto, Kohei Kushiro, Ryo Suzuki, Naohiro Yanagimura, Miyuki Sato, Tomohiro Tanaka, Koichiro Nozaki, Yu Saida, Toshiaki Kikuchi, Hiroyuki Ishikawa
【doi】10.1016/j.acra.2026.07.007
 
 
【用語解説】
(注1)18F-FDG-PET/CT検査
PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)とCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)を組み合わせた医用画像検査です。この検査では、18F-FDG(18F-fluorodeoxyglucose)というブドウ糖によく似た放射性薬剤を体内に投与します。18F-FDGは、がん細胞や炎症細胞など、ブドウ糖を多く消費する部位に集まる性質があります。その集積をPETで捉え、CT画像と重ね合わせることで、18F-FDGが集まった場所を詳しく評価できます。
(注2)免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞が免疫細胞にかけている「ブレーキ」を解除し、患者自身の免疫細胞ががんを攻撃できるようにする薬剤です。肺がんのほか、胃がん、腎がん、乳がん、悪性黒色腫など、さまざまながんの免疫治療に用いられています。
(注3)免疫関連有害事象
免疫チェックポイント阻害薬によって活性化した免疫が、がん細胞だけでなく正常な臓器も攻撃することで生じる副作用です。肺に生じる間質性肺疾患のほか、皮膚障害、甲状腺機能障害、大腸炎、肝障害など、全身のさまざまな臓器に起こる可能性があります。
(注4)間質性肺疾患
肺の「間質」と呼ばれる部分に炎症が生じる病気の総称です。進行すると肺が硬く縮む「線維化」が起こり、咳や息苦しさの原因となります。重症化すると、呼吸不全につながることがあります。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関すること】
新潟大学大学院医歯保健学研究科
呼吸器・感染症内科学分野
准教授 渡部 聡(わたなべ さとし)
E-mail:satoshi7@med.niigata-u.ac.jp
 
【広報担当】
新潟大学医歯学系総務課
E-mail:shomu@med.niigata-u.ac.jp

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