感染症グループ

診療について

2017年度から日本小児感染症学会が認定する小児感染症の専門医制度が始まり、新潟県内では大学病院と新潟市民病院の2施設でのプログラムが始動しました。この2施設および関連施設において、小児感染症症例の診療についてのコンサルテーション業務を行っています。2022年4月から12月まで459件(大学病院195件、新潟市民病院173件、関連病院91件、PCRを除く)のコンサルテーションがありました。

本年度の相談例:COVID-19(肺炎、脳症、免疫不全者)、菌血症を伴う肺炎(A群溶連菌、インフルエンザ菌)、肺膿瘍、Ludwig’s angina、眼窩蜂窩織炎、乳様突起炎、耳瘻孔感染、扁桃周囲膿瘍、腎盂腎炎(ESBL産生大腸菌、Raoultella ornithinolytica)、急性化膿性関節炎・骨髄炎、急性胆管炎、新生児乳腺炎、壊死性皮膚軟部組織感染症、免疫不全者の帯状疱疹、菌血症(肺炎球菌、MRSA、サルモネラ、セラチア、Lactobacillus rhamnosus)、細菌性髄膜炎(肺炎球菌、Streptococcus gallolyticus)、脳膿瘍、新生児淋菌性結膜炎、先天梅毒、中心静脈カテーテル関連血流感染症(Candida albicans、C.lusitaniae、黄色ブドウ球菌、Streptococcus salivarius)、重症複合免疫不全症(サイトメガロウイルス肺炎・ニューモシスチス肺炎)、IgG2サブクラス欠損症、動物咬傷(イヌ、ネズミ)など

研究について

リアルタイムPCRを用いた微生物迅速診断

小児の重症感染症(敗血症、髄膜炎、呼吸器感染症など)の多くは、細菌感染症ですが、新生児、早期乳児、免疫不全患者では、ウイルスによる重症感染症が知られています。これらの感染症に対して、real-time PCRを用い、約20種類以上のウイルスに対する迅速診断を行っています。検体は、県内外の医療機関から送付され、通常、検体受付後48時間以内に検体結果を返却、実際の臨床の現場にその結果を還元しています。また、新規ウイルスに対するreal-time PCRを用いたアッセイの開発も行っています。

新生児、早期乳児におけるパレコウイルスA3感染症の病態解明

パレコウイルスA3は新生児、早期乳児に敗血症や髄膜脳炎をきたすことが知られていますが、そのメカニズムは解明されていません。受容体の同定、宿主の自然免疫応答などを調査し、その病態のメカニズムを解明しています。また、モノクローナル抗体の作成や、抗ウイルス薬・母乳の効果をin vitroの実験系において検討しています。(新潟大学医学部保健学科 渡邉香奈子先生、新潟大学歯学部 寺尾豊先生、血液腫瘍班申先生、今井千速先生との共同研究)

国内におけるパレコウイルスA3の前方視的疫学研究

国内では国立感染症研究所からパレコウイルスA3の検出数が公開されていますが、これは基幹定点施設からの届け出を基に作成されており、必ずしも実態を反映していません。国内11か所、12の小児科専門医療施設において、前方視的にパレコウイルスA3の流行をとらえ、その疫学を明らかにするとともに、迅速にその情報を公開し、診療の参考になる有益な疫学情報を提供するプラットフォームの確立を目指しています。https://www.med.niigata-u.ac.jp/ped/parechovirus/

早産児の腸内及び鼻腔細菌叢の推移と呼吸器感染症の関わりの検討

近年、次世代シークエンサーを用いたメタ16S rRNA解析による常在細菌叢と疾病との関連の研究が発展しています。出生後にNICUという特殊な環境下で育った早産児の細菌叢の長期的な推移と、早産児で頻度の高い生後1年未満の呼吸器感染症との関わりを調査し、細菌叢が感染症に与える影響について検討します。(新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター 池内健先生との共同研究)

アジア諸国との国際共同研究

ミャンマーにおける小児急性呼吸器感染症の起因微生物の検討

2015年より、文部科学省の感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)のミャンマー拠点に選考され、小児の急性呼吸器感染症の微生物の探索をミャンマーの首都ヤンゴン市にあるヤンキン小児病院で調査しています。ミャンマー保健省、ミャンマー第2医科大学、国立衛生研究所(National Health Laboratory)と新潟大学の間の共同研究です。(新潟大学国際保健学教室 齋藤玲子先生との共同研究)

ベトナムにおける急性呼吸器感染症の研究

2019年から、日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業の中で、ベトナムにおける急性呼吸器感染症の研究、特に百日咳に関する研究をベトナム国立小児病院との共同研究で行っています。(国立感染研究所 感染病理部 中島典子先生との共同研究)

全国における疾病サーベイランスへの参加

細菌性髄膜炎および全身性細菌感染症、百日咳、腸重積サーベイランスの多施設共同研究に参加しています。(AMED研究班)

サブスペシャリティ研修について

感染症コンサルテーションを通して若手小児科医に対して感染症診療の教育活動を行っています。2017年度から、日本小児感染症学会の専門医研修施設として認定され、小児感染症教育としての役割は増していくものと予想されます。現在、週に1回、大学病院と新潟市民病院間でインターネットによるカンファレンスにより、相互の症例についてのディスカッションを行っています。また、研究面では、医学生(3年生)の医学研究実習を積極的に受け入れ、毎年学生の研究面でのサポートを行っています。また、教室に入り5年以内の若手小児科医を対象として年4回開催されるBasic Core Lectureの事務局を担当しています。

グループメンバー

  • 齋藤昭彦(新潟大学 教授、日本感染症学会感染症専門医・指導医、小児感染症認定暫定指導医(専門医))
  • 相澤悠太(新潟大学 助教、日本感染症学会感染症専門医、小児感染症認定指導医(専門医))
  • 山中崇之(新潟市民病院 小児科、日本感染症学会感染症専門医、小児感染症認定指導医(専門医))
  • 羽深理恵(新潟市民病院/新潟大学 小児科)
  • 佐藤聖子(荘内病院 小児科)
  • 泉田亮平(済生会三条病院 小児科)
  • 幾瀨樹(成育医療研究センター 感染症科)
  • 太刀川潤(新潟大学 大学院生)
  • 齋藤裕子(新潟大学 技師)

外部リンク

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