嶋ろひ先生
幅広い症例の経験が成長につながります。
※専攻医プログラムに関する2020年のインタビューです。
他県の大学を卒業し、新発田病院で初期研修を受けました。専攻医プログラムで新潟大学を選んだのは、全県の症例が一大学に集まることで、小児科医として幅広く、かつ希少な経験ができると思ったこと、専攻医プログラムの3年間に小児科専門医の取得が可能であること。たとえば、マススクリーニングで陽性となったすべての子どもが当学に集まるように、各分野の症例が一か所に集まり、実践的に学べるのが魅力でした。また、初期研修時から新潟大学主催の勉強会に誘っていただいて、顔なじみの先生が多かったことも後押しになりました。向学心が高く、それでいてフレンドリー、その仲間に加わりたいと思ったんです。
実際に病棟に出てみると、症例の幅広さは予想を超えました。経験したことのない、いわゆる難病奇病の子どもも多く、自分の知識の足りないことを痛感。でも、ここには感染症を始め、腎臓・免疫、血液腫瘍、循環器、内分泌・代謝、新生児の6つの診療班があり、それぞれに専門医がいます。これだけの専門医が一病院にいるのは稀なことです。患者さんにとっては頼もしく、後期研修医にとっても、その道の大家に気軽に質問ができ、教えてもらえることは貴重な経験。恵まれた環境で小児科医としてスタートできてよかったと思っています。
今は様々な班で研修しており、現在は血液腫瘍班に所属しています。今後、いよいよ専門を決めることになりますが、今は、まだ専門は迷っています。治療の現場では、小児の病気を総合的に診療する一般小児科医が求められ、重要な役割を担っていますが、高度医療を担う専門医も必要だし、また憧れもあり、今はまだ決められません。どの道を選んだとしても、未来のある子どもたちを支えるために力を尽くしたい、輝く笑顔を守りたいという、小児科医を目指したときの決意を大切に、努力し続けたいと思います。
田中岳先生
神奈川の病院で過ごした1年で視野が広がりました。
※サブスペシャリティ研修に関する2020年のインタビューです。
研修のスーパーローションで小児科へ。それまでは、大人の患者を診ていたので、子ども目線に合わせた診療がとても新鮮でした。中でも、NICUは小さな保育器がずらりと並んだ、それまで経験したことのない異空間。患者も器具も驚くほど小さくて、治療している先生方がかっこよく見えたのが、小児科志望のきっかけです。その先生方に優しく、熱心に指導していただき、いつか自分もこういう小児科医になりたいと憧れて、入局を決めました。小児科医は子どもの全身、すべての臓器を診るのでやりがいも大きいです。
小児科学教室では、小児科専門医取得後のサブスペシャリティ研修として、本人が希望する国内外の施設への留学を推進しています。NICUは病院によって施設や運営がかなり異なるので、ぜひ経験したくて、神奈川県立こども医療センター新生児科を選び、1年間研修しました。神奈川県中の重症の子どもが集まる場で最先端の医療を経験できたことも有意義でしたが、そこに全国から留学してきた若い医師と地域医療について話せたこともよかったです。新潟県の医療者も患者や家族も穏やかで温かく、互いに信頼しあって治療に向き合っているんだと、外から見なければわからないことに気づけたのもこの時です。
先日、うれしいことがありました。6年前、22週に400gで生まれた赤ちゃんが、成長して「小学校に入学しました」と、一人で歩いて訪ねてきてくれたんです。NICUにいたときには、歩けるようになるかなと心配していたくらいだったのに。子どもの可能性は想像を越えます。あの厳しい状況からよくここまで、という、奇跡のような回復は決して少なくありません。NICU専門医資格を取って2年目、これからも、一人でも多くの子どもを元気に家族の元へ返せるよう、知識や経験、技術のレベルアップを図っていきたいです。
幾瀨樹先生
ミャンマーで学んだことを新潟に活かしていきます。
※サブスペシャリティ研修に関する2020年のインタビューです。
小児感染症を専攻したのは、発展途上国の子どもの命を奪う一番の原因が感染症だったからです。高校時代から発展途上国の支援に興味があり、それに貢献できる仕事に就きたいとずっと思っていました。だから、後期研修先には、小児感染症を専門とする先生がいらっしゃる大学を探しました。感染症の専門医として齋藤先生は有名でしたし、新潟大学の友人の勧めもあり、まず見学に来ました、齋藤先生に自分のビジョンを伝えると、ちょうどミャンマーの病院と感染症の共同研究を進めているから、私のビジョンに合う道を用意しようと言ってくださいました。
生まれも大学も東京でしたが、温かく迎えてもらい、アウェー感は全くありませんでした。研修の最終年、2018年にはミャンマーへ短期留学がかない、国立感染症研究所や病院の医療現場を見学することができました。医療機器が不十分なこともあり、日本なら検査をするところを、ミャンマーでは検査に頼らず、よく聞く、よく話すことでスキルを上げ、診療能力を高めている。こういうところは学ぶべきです。日本で活かしていきたいと思っています。ミャンマーの他、ベトナムとのプロジェクトも進行中で、今後も関わっていくつもりです。
2018年には、エンテロウイルスD68についての研究も進めました。新潟県では新潟大学が主体となった協力体制を確立しているから、膨大な検体もデータもスムーズに集まってくるので、調査がしやすいという利点があります。論文にまとめる際には、先生が熱心に指導してくださり、2019年にアメリカで開催された国際学会で発表することができました。こうしたグローバルな経験はきっと次の研究にも役立つはず。次は大学院進学と臨床の両輪でキャリアアップを図っていきます。