腎・膠原病グループ
腎グループ
診療について
小児腎疾患の診療は、日常しばしば遭遇する尿路感染症や、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎の他、透析や腎移植といった腎不全などがその対象となります。電解質異常や高血圧などで相談を受けることもあります。
当科で診療する尿路感染症は、尿路に機能形態的異常を有する複雑性尿路感染症であるケースが多く、耐性菌治療や外科的処置が必要になることも稀ではありません。そのような場合、感染症グループや泌尿器科、小児外科と協力して治療にあたります。ネフローゼ症候群では、再発を繰り返してステロイド依存になる例やステロイド治療に抵抗性である例など、いわゆる難治性ネフローゼ症候群では当院に紹介していただき治療しています。学校検尿や肉眼的血尿などを契機に血尿・蛋白尿を指摘された慢性腎炎症例では、腎生検による組織学的診断を行った上で治療を行います。
腎不全診療は、保存期から末期にいたるまで継続して診療が行えます。乳幼児期に末期腎不全にいたれば、腹膜透析を導入します。体格が大きくなれば幼児期(小学校入学前)に腎移植が可能です。当院泌尿器科は小児患者に対しても積極的に腎移植を行っており、当院のみで腎不全診療を完結できるのが大きな特徴です。また、小児腎不全の最大の原因である先天性腎尿路異常では、泌尿生殖器系の異常を合併していることが多く、腎臓の治療で終わりというわけではありません。生涯様々な合併症をケアしていく必要があるため、私達は、小児科、小児外科、泌尿器科、産婦人科、整形外科、形成外科、放射線科の医師の他、看護師、ソーシャルワーカーとともに小児泌尿生殖器疾患治療チームを立ち上げ毎月検討会を行い、一人一人の患者さんについて適切な医療を議論し、治療にあたっています。こうした慢性腎臓病の他にも、急性腎障害、あるいは川崎病、肝不全、高アンモニア血症など腎障害以外の疾患でも血液浄化を行っています。
このように、小児腎疾患といっても、その対象は腎臓のみにとどまらず、非常に多くの科や職種と連携して診療にあたり、全身的な管理を行っています。
研究について
私達は新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター機能分子医学講座の先生方と共同で、尿中メガリンの研究を行っています。メガリンは1回膜貫通型の巨大タンパク質で、腎臓の近医尿細管管腔側膜に多く発現しています。糸球体で濾過されたタンパク質や薬剤などの再吸収・代謝を司るエンドサイトーシス受容体として機能しています。このメガリンが尿中に排出されていることを新潟大学が明らかにしました。そこから発展して、これまで成人領域で、糖尿病性腎症などの慢性腎臓病や薬剤性腎障害などの急性腎障害において、メガリンが腎障害を引き起こす「入り口」分子であることが報告され、今後その拮抗薬が腎臓病の新たな治療薬として期待されています。
私達小児科は、小児の慢性腎臓病とメガリンの関係に着目しました。小児の慢性腎臓病の原因も多岐にわたりますが、近年低出生体重児が一定の割合で慢性腎臓病を発症することが分かってきました。およそ1割の赤ちゃんが2500g未満の低体重で産まれてくる日本において大変重要な問題です。私達は、低出生体重児の尿中メガリンが、慢性腎臓病の早期発見に役立つか、ひいては治療に結び付くか研究を行っています。低出生体重児にかぎらず、慢性腎臓病発症のリスクのある小児全般においても研究を進めていきたいと考えています。
その他の研究としましては、学校検尿制度を利用したものがあります。新潟市では早くから学校検尿の制度が整備されました。一次・二次検尿で異常を指摘された学童を一か所に集めてそこで精密検診を行っています。新潟市内で小児の腎生検を行っている施設は現在当院のみであるため、検診から診断・治療にいたるまでの把握が容易であり、小児腎疾患の疫学研究を行っています。
また、小児慢性腎臓病の原因として最多である先天性腎尿路異常(CAKUT)の発見のために学校検尿を有効に活かせないか研究しています。CAKUTは一般的な検尿スクリーニングで早期に見つけることは困難です。私達は尿中低分子蛋白測定を精密検診時に導入することで、この疾患を早期に発見できるか調査中です。全国に先駆けた試みであり、CAKUT以外の疾患が発見される可能性もあります。
新規尿検査の研究について
サブスペシャリティ研修について
臨床面での目標は、まずは日常診療する機会の多い学校検尿で指摘された異常について、適切なフォローアップや腎生検適応の判断、さらには腎生検手技の修得や組織診断知識の獲得があります。水分・電解質管理、小児の腎機能など非常にベーシックなものから、急性・慢性腎障害の管理といったより専門的なものまで、その知識・技術の修得が可能です。特に小児腎不全診療は、透析や腎移植など非常に高度な技術が必要となり、国内においても腎移植を含む小児の慢性腎不全診療が可能な施設は多くありません。したがって、当院においても高度な診療技術の修得は可能です。また、より多くの疾患・診療を経験するため、あるいは新たな研究分野を開拓するため、留学も可能です。全国規模の臨床研究に参加し、国内の主要機関とも交流を深めています。
グループメンバー
- 山田剛史
- 長谷川博也
- 金子昌弘
- 稲葉聡
外部リンク
膠原病グループ
診療について
小児のリウマチ・膠原病は他の領域に比べ発生頻度が低く、一般診療の中では遭遇し難い領域のひとつです。若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデスが代表疾患ですが、高安動脈炎、炎症性筋疾患、ベーチェット病など、幅広く診療しています。また、遺伝子診断のシステムの確立により、自己炎症症候群も早期診断が可能となり、御紹介頂く機会が増えています。さらにクローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患も、消化器内科と連携しながら診療しています。
従来、小児のリウマチ性疾患は専門医が極端に少なく、地方では専門外の医師が対応せざるを得ない状況が全国的にありましたが、近年の著しい治療の進歩から、診療に専門性が求められるようになりました。抗サイトカイン薬をはじめとする生物学的製剤や新たな免疫抑制薬によりリウマチ性疾患、炎症性腸疾患の治療体系に劇的な変革がおき、大量ステロイドの副作用に苦しんでいた子供たちに多大な恩恵をもたらしています。当科においても全身型、多関節型若年性特発性関節炎、高安動脈炎に対する抗IL-6レセプター抗体(トシリズマブ)、クローン病、潰瘍性大腸炎に対する抗TNFα抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)などの治療を行っております。このほかにも新たな製剤が続々と開発され、より有効性、安全性が高く、個々の病態や生活スタイルに見合った製剤を選択できるようになりつつあります。
リウマチ・膠原病診療は早期に病勢をコントロールし、将来的に臓器障害や関節の機能障害をいかに抑えるかが重要です。患者さんが疾患発症前と変わらぬ夢や希望を持ち続けることができるよう、県内全体の小児リウマチ性疾患の治療の質を向上させることを目指しています。
サブスペシャリティ研修について
リウマチ・膠原病領域には日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医という制度があり、日本リウマチ学会に所属して3年以上、学会に認定された教育施設において指定の専門医研修カリキュラムに従って通算3年以上のリウマチ学の臨床研修を行うと受験資格が得られます。当院は日本リウマチ学会認定の教育施設となっています。また、小児リウマチ学会では若手の育成、教育に取り組んでおり、若手小児科医を対象に小児リウマチ研修会が年一回開催されています。レクチャーやケースカンファレンスなど、魅力あるプログラムになっているので、興味のある先生は是非参加されることをお勧めします。
グループメンバー
- 金子詩子(新潟大学 助教)
最新のグループ情報
© 新潟大学医学部小児科学教室