血液・腫瘍グループ

白血病、難治性血液疾患、小児がんの患者の診療は、急性期は集中治療を要することも多く、感染症や緩和ケアなど様々な知識が求められます。患者の病気を克服するための治療だけでなく、治療に伴って生じる晩期合併症を含めて、長期にわたって患者と家族に寄り添っていくことが求められています。アカデミックな活動だけでなく、多職種連携や親の会(SMILEの会)、がんの子どもを守る会、NPO団体などとの交流により、患児の学業面や心理面、家族の社会経済的側面も含めて患者とその家族を全人的に支える医療(Total therapy)を目指しています。大変ですがやりがいのある仕事だと思いますので、多くの若手の先生に興味を持っていただきたいと思います。

診療について

新潟県全域および山形県沿岸部、福島県会津地方などの近県における小児がんおよび血液疾患診療は、新潟大学医歯学総合病院小児科と新潟県立がんセンター新潟病院小児思春期・血液腫瘍科の2施設に集約化されています。

新潟大学医歯学総合病院は関東甲信越ブロックにおける小児がん連携病院の内、年間20症例以上を診療する類型1-Aに認定されています。脳腫瘍を含む全診療域を網羅しており、日本小児血液・がん学会の専攻領域のすべてを経験できます。歯学部附属病院が併設されているため、2010年から歯科医が口腔ケアに介入し、現在では全例に関わっています。2019年4月より、当院の中央診療部門として「小児がん医療センター」が設置されました。同年7月からは米国の小児疾患療養の専門家の資格であるチャイルド・ライフ・スペシャリストが赴任し、小児がん相談員、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士と共に多職種連携を取りながら、患者、きょうだいを含めた家族支援を行っています。院内学級を有し、教育委員会や難病支援センターといった外部施設と連携を取り未就学児から高校生までの教育・復学支援にも積極的に取り組んでいます。また、院内スタッフを中心とした研修会を年に3-4回、院内外の医療従事者を対象とした新潟県小児がん患者・家族支援研修会を年に1回開催し、人材育成にも取り組んでいます。また、新潟県内の学校でがん教育の外部講師として授業を行い、小児がんの啓発活動も行っています。

また、新潟大学医歯学総合病院は血友病診療地域中核病院に認定されており、血友病の診療にも積極的に取り組んでいます。小児血液凝固外来には新潟県全域から30名近くの患者さんが通院しており、整形外科と密接に連携することで血友病性関節症への早期対応に努めています。必要に応じて成人例も診療し、保因者相談も随時行っています。

新潟県立がんセンター新潟病院小児思春期・血液腫瘍科は、長い歴史を誇る全国でも有数の施設で、小児がん連携病院の類型1-Bに認定されています。緩和ケア科では岩渕晴子先生が緩和ケア医として勤務しています。また、阿部咲子先生はがんセンターと大学病院の両施設で長期フォローアップ外来を担当しています。

両施設の診療実績は下記外部リンクの小児がん診療施設情報をご覧ください。

研究について

血液・悪性腫瘍の診療では、研究の進歩がダイレクトに、そしてスピーディに反映されますので、分子生物学や免疫学の基礎知識が必要であり、また研究論文のcritical readingの能力が必要です。臨床能力を高めるためにも、一定の期間の基礎研究の経験を持つことを勧めています。最近のがん診療のトピックとして、固形腫瘍のみでなく造血器腫瘍でも遺伝子パネル検査が行えるようになったことが挙げられます。小児がんを診療するうえでも、最新のゲノム医学の情報を患者の診療に反映することができる医師を目指します。

研究の場としては、小児科学教室、学内基礎教室のほか、学外の研究室でも良いと思います。これまでに岩渕晴子先生、今村勝先生が病理学教室、阿部咲子先生と高地貴行先生がウイルス学教室で、各専門分野を学びました。細貝亮介先生、笠原靖史先生、申将守先生、久保暢大先生は小児科内で大学院生として基礎研究を行いました。現在、笠原靖史先生ががんセンターで勤務しながら客員研究員として、馬場みのり先生が大学院生として、研究費を獲得しながら研究に励んでいます。現在は、キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞の開発とナチュラル・キラー(NK)細胞の体外増幅・遺伝子改変を中心とした難治性白血病、難治がんに対する新規治療開発の研究を行っています。2023年8月までチーフだった今井千速先生は、米国で研究中にCD19に対するCARを新規開発しました(anti-CD19-BB-z)。この新しいCAR遺伝子を用いて、米国ペンシルバニア大学が臨床開発を行い著明な臨床効果が確認されたため、2017年に米国FDAより本療法が正式認可されました(商品名:キムリア)。2019年5月に本邦でも認可され、2025年3月現在で小児科でも2名の患者さんに投与し、順調に経過しています。現在は富山大学小児科の教授となられた今井先生とも協力しながら、研究を進めています。

また、日本小児がん研究グループ(JCCG)に所属して、ほとんどの臨床研究に参加しています。それぞれが希少疾患である小児がんの各腫瘍性疾患については、施設毎に治療を開発することは不可能であり、また診療レベルも全国で一定になりません。そのため、全国共同で治療法を改善していくことがきわめて大切です。新潟大学グループからは各疾患委員会や専門委員会に委員を送り、活発に研究に参加しています。詳しくは下記外部リンクからご覧ください。

サブスペシャリティ研修について

新潟大学と新潟県立がんセンター新潟病院のどちらも、日本血液学会、日本小児血液・がん学会、日本造血・免疫細胞療法学会の認定施設となっており、血液専門医、小児血液・がん専門医、日本造血・免疫細胞療法学会認定医、日本がん治療認定機構がん治療認定医などが取得できます。血液腫瘍の専攻医として修練を行う場合には、この2施設をバランスよく行き来していただきます。稀な疾患やあまり知られていない合併症、あるいは2施設の臨床データの合同解析などを専門学会で発表してもらいます。また、専門医取得に向けて、論文作成を目指します。3-4年で血液専門医受験資格が得られますので、通常はまず血液専門医を取得し、その後小児血液・がん専門医の取得を目指します(2024年7月以降、小児血液・がん専門医が小児腫瘍医となり、同時に血液専門医の申請条件が変更される可能性があります。変更された場合は上記と異なる可能性があります)。

大学での研修:血液腫瘍班の一日当たりの入院患者数は10-18人前後おり、大学病院の小児病棟の運営上、欠くことができない存在です。毎週月曜日に病棟多職種カンファレンス(小児科・小児外科医、歯科医師、看護師、薬剤師、保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト)、金曜日夕方に週末カンファレンスを行い、全員で全症例を把握できるようにしています。固形腫瘍については、新潟大学とがんセンターの小児科医、新潟大学小児外科、整形外科、脳神経外科、放射線科、病理などの診療科と合同で‘新潟Tumor Board’(新潟県小児悪性腫瘍研究会)を月に1回定期開催し、全症例を対象に治療方針の検討を行っています。これは1967年から続く、大変歴史のある取り組みで全国でも注目されています。さらに、放射線治療が主要テーマの場合などでは成人の専門家も含める‘Cancer Board’で症例の治療方針を討議しています。造血器腫瘍(+その他の血液疾患と造血幹細胞移植)については、これらと別に新潟小児血液検討会をがんセンターと月に1回定期開催しています。また、臨床系の抄読会を実施し、最新の情報をアップデートしています(月2回)。2022年4月からは日本小児血液・がん学会の専門医研修体制において、新潟大学は北信越の7施設(新潟大学、新潟がんセンター、富山大学、金沢大学、金沢医科大学、信州大学、長野こども病院)を統括する責任施設となっており、2か月に1回定期ミーティングを開催しています。

留学(海外、国内):これまでに今村勝先生が国立シンガポール大学、阿部咲子先生がカリフォルニア大学デービス校に留学され、素晴らしい業績を挙げてこられました。また、細貝亮介先生は、血友病臨床で日本の大半の症例を診療している荻窪病院に国内留学され、血友病業界では注目の若手医師として頭角を現し、全国各地での講演会で活躍しています。また、一定の経験を積んだ後で臨床留学の希望があれば前向きに検討します。

グループメンバー

新潟大学

  • 今村勝:小児血液がん専門医・指導医、血液学会血液専門医・指導医、造血免疫細胞療法学会認定医
  • 細貝亮介:小児血液がん専門医・指導医、血液学会血液専門医・指導医、造血免疫細胞療法学会認定医、血栓止血学会認定医
  • 久保暢大:小児血液がん専門医、血液学会血液専門医
  • 中野貴明
  • 阿部咲子(長期フォローアップ担当):小児血液がん専門医、血液学会血液専門医
  • 馬場みのり(大学院生):小児血液がん専門医、血液学会血液専門医

新潟県立がんセンター 新潟病院

  • 小川淳(小児思春期・血液腫瘍科):小児血液がん専門医・指導医、血液学会血液専門医、造血免疫細胞療法学会認定医
  • 渡辺輝浩(小児思春期・血液腫瘍科):小児血液がん専門医・指導医、血液学会血液専門医・指導医、造血免疫細胞療法学会認定医、がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 笠原靖史(小児思春期・血液腫瘍科):小児血液がん専門医、血液学会血液専門医
  • 川上優吾(小児思春期・血液腫瘍科)
  • 岩渕晴子(緩和ケア内科):小児血液がん専門医、血液学会血液専門医・指導医

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