田中岳先生
神奈川の病院で過ごした1年で視野が広がりました。
※サブスペシャリティ研修に関する2020年のインタビューです。
研修のスーパーローションで小児科へ。それまでは、大人の患者を診ていたので、子ども目線に合わせた診療がとても新鮮でした。中でも、NICUは小さな保育器がずらりと並んだ、それまで経験したことのない異空間。患者も器具も驚くほど小さくて、治療している先生方がかっこよく見えたのが、小児科志望のきっかけです。その先生方に優しく、熱心に指導していただき、いつか自分もこういう小児科医になりたいと憧れて、入局を決めました。小児科医は子どもの全身、すべての臓器を診るのでやりがいも大きいです。
小児科学教室では、小児科専門医取得後のサブスペシャリティ研修として、本人が希望する国内外の施設への留学を推進しています。NICUは病院によって施設や運営がかなり異なるので、ぜひ経験したくて、神奈川県立こども医療センター新生児科を選び、1年間研修しました。神奈川県中の重症の子どもが集まる場で最先端の医療を経験できたことも有意義でしたが、そこに全国から留学してきた若い医師と地域医療について話せたこともよかったです。新潟県の医療者も患者や家族も穏やかで温かく、互いに信頼しあって治療に向き合っているんだと、外から見なければわからないことに気づけたのもこの時です。
先日、うれしいことがありました。6年前、22週に400gで生まれた赤ちゃんが、成長して「小学校に入学しました」と、一人で歩いて訪ねてきてくれたんです。NICUにいたときには、歩けるようになるかなと心配していたくらいだったのに。子どもの可能性は想像を越えます。あの厳しい状況からよくここまで、という、奇跡のような回復は決して少なくありません。NICU専門医資格を取って2年目、これからも、一人でも多くの子どもを元気に家族の元へ返せるよう、知識や経験、技術のレベルアップを図っていきたいです。
幾瀨樹先生
ミャンマーで学んだことを新潟に活かしていきます。
※サブスペシャリティ研修に関する2020年のインタビューです。
小児感染症を専攻したのは、発展途上国の子どもの命を奪う一番の原因が感染症だったからです。高校時代から発展途上国の支援に興味があり、それに貢献できる仕事に就きたいとずっと思っていました。だから、後期研修先には、小児感染症を専門とする先生がいらっしゃる大学を探しました。感染症の専門医として齋藤先生は有名でしたし、新潟大学の友人の勧めもあり、まず見学に来ました、齋藤先生に自分のビジョンを伝えると、ちょうどミャンマーの病院と感染症の共同研究を進めているから、私のビジョンに合う道を用意しようと言ってくださいました。
生まれも大学も東京でしたが、温かく迎えてもらい、アウェー感は全くありませんでした。研修の最終年、2018年にはミャンマーへ短期留学がかない、国立感染症研究所や病院の医療現場を見学することができました。医療機器が不十分なこともあり、日本なら検査をするところを、ミャンマーでは検査に頼らず、よく聞く、よく話すことでスキルを上げ、診療能力を高めている。こういうところは学ぶべきです。日本で活かしていきたいと思っています。ミャンマーの他、ベトナムとのプロジェクトも進行中で、今後も関わっていくつもりです。
2018年には、エンテロウイルスD68についての研究も進めました。新潟県では新潟大学が主体となった協力体制を確立しているから、膨大な検体もデータもスムーズに集まってくるので、調査がしやすいという利点があります。論文にまとめる際には、先生が熱心に指導してくださり、2019年にアメリカで開催された国際学会で発表することができました。こうしたグローバルな経験はきっと次の研究にも役立つはず。次は大学院進学と臨床の両輪でキャリアアップを図っていきます。